「お前が…好きだ」



15年越しの想い。
それは、酒が入った勢いに乗せてつい口から零れ落ちた。
世間話から一転、突然告げられた言葉に御剣のアッシュグレーの瞳が揺れた。
それを見て、一世一代の大告白を日常会話に混ぜてしまった事を後悔する成歩堂。

「な…?」

先程まで良い具合にとろんとしていた御剣は驚きに目を見開いている。

(…もう、なるようになれ)

「な、な…」

「一応先手を打って置くけど、恋愛感情だからね」

「な、な、な…」

「小学生の時からずっと好きだったんだ…」

「なななななな成歩堂ッ!」

先程から「な」しか言わなかった御剣は、やっと言葉を発した。
かと思うと顔を真っ赤に染めて、最早開き直った成歩堂に、やはり酒のせいか常時より大きな声で叫んだ。

「私もキミが好きだっ!!!!」

成歩堂は、此処が御剣の防音も効いた高級マンションだったことに安心した直後。

「何だってぇぇえ!!?」

自らも絶叫した。











いつの間にか2人、転がるようにベッドへもつれ込み、お互いに抱き締め合った。
口付けもどちらからともなく、次第にヒートアップしていった。
お互いに何年待ったか解らない愛しい唇を貪り合って、体に触れ合って。
2人ともはだけたシャツとスラックス1枚になったところで、手が止まった。
ふと、2人の頭を同時に過ぎった思考。


(御剣…もしかして僕を抱くつもり…とか…?)

(成歩堂…、は…抱かれるつもりなのだろうか?)

甘い雰囲気からまたしても一転。石化した二人は、恐る恐るといった様子で視線をかち合わせる。

「ねぇ…」
「なぁ…」

同時。2人は瞬時に思考を巡らせた。

(何だ?やっぱり「キミが下だよな?」って事なのか?
そりゃそうだよな、御剣も男だもんな…挿れられるよりは挿れたいだろうなぁ…。
だけど!僕が毎晩夢に見る御剣は僕の下であんあん喘いでるんだよ…!
見たい!乱れる御剣!ていうか挿れたい!!!!
……でもそんなこと言って空気悪くなったらどうしよう…折角思いが通じ合ったのに!
僕はっ、僕は君が望むなら…下だって…下だって…嫌だけど頑張る!!!)


(…こいつはどっちなんだ!?わざわざ声をかけてくるということは下なのか…?
まぁ客観的にどう見ても私が上であろう事は否定できない。出来ない、出来ないが!
毎晩毎晩夢に出て来るキミは、その無骨な指先で私の……って私は何を考えているのだ!
ああ、しかし、成歩堂が下だった場合…私が下になりたいと言ったら引くのではないか?
それは嫌だ、折角想いが通じたのに…。ならば、私は、私はキミの為ならば上とて厭わない!)

2人は完全にすれ違った状態で、数分間に思える刹那じっと見つめ合った。
腹を括って行動を起こしたのは御剣。

「……優しく、する」

どこか苦々しげに眉を寄せてそれだけ呟くと、体重をかけ成歩堂をベッドに押し倒した。

「う…うん」

成歩堂は御剣のその表情を緊張故の物と受け取り、渋々と言った感じで返事をした。

(やっぱり…そうなのか…)

この行動が正解だったのだと悟る御剣。
その思考は正しかったのだと思う成歩堂。
意志の疎通が図れないまま、行為に縺れ込む。










「…良くないのか…?」

成歩堂自身を扱き上げていた御剣だったが、手を止めて不安げに彼の顔を覗き込む。
あまりに近い距離で、しかも泣きそうに潤んだ瞳で見つめられ、成歩堂は心臓が痛いほど跳ねたのをまざまざと感じる。

「いや…良いよ。気持ち良い」

これは一応彼の本音ではあった。
好きで好きで堪らない相手に性器を弄られて気持ち良くない筈はない。
それでも何故か感じ入るには至らない。

(…何故か、なんて解りきってるじゃないか)

成歩堂の気持ちも知らず、御剣はそうか、と呟いて頷いた。
そしてもっと気持ちよくしてやろうと、自身を扱いて居ない方の指先をYシャツの隙間から滑り込ませる。
胸の突起を捕らえ中指で円を描くように触れられ、成歩堂の体が強張る。

「…っ」

自分がこんな所で感じるとは思っておらず、くすぐったいような性感に瞼を臥せた。
彼が握っている自身も裏筋や尿道口、敏感な部分を責められて流石に身が震える。

(不器用な癖に意外とやるな…っ)

失礼な事を考えながら、じわじわだがやってくる快楽に身をゆだねる。
もうどうにもならないのだ、いっそ気持ち良くでもならないと報われない。

「御剣、僕の舐めて?」

もういっそ何も考えられなければ良い。そう思って出た台詞。
ああ今の台詞は下が言うものじゃないな、などと思いながら御剣の頬を撫でた。

「う…ム」

かけられた言葉に戸惑いながらも従う。
身を屈ませ、成歩堂のものの根元を握って顔を近付ける。

(成歩堂の、匂い…)

嗅覚に届いた青い匂いに、御剣の心臓がドクンと高鳴る。
唇を薄く開くと先端を口内に導いて。遠慮がちに舌を這わせると、それはだんだんと質量を増す。

(大きい…)

御剣は自らも息が荒くなるのを感じ取る。舐めているだけで瞳は潤み、頬は蒸気して欲情してしまう。
しっかりと喉までくわえ込んで、それが熱く脈打つのを感じる。

(欲しい…、成歩堂…無茶苦茶に、されたい…)

うっとりと奉仕を続ける御剣は、自らの腰が揺れそうになるのを必死に抑えつけていた。
一方の成歩堂もその場に御剣を勢いよく押し倒したくなるのを何とか耐えている。

(ヤバい…気持ち良い…)

感じている場合ではないが、やはりどうしようもない。
口の中は熱くて絡み付いてくるようで、成歩堂は御剣の中に挿入している所を思い描いた。

(挿れたい…君をぐちゃぐちゃにしたい…)

「…御剣」

自分でも驚くほど熱く低い声でその名前を呼んだ。
その色気に、腰から脚の爪先までだるさにも似た痺れが駆け抜けた御剣は、自分の中の何かが壊れる音を聞く。

歯止めが効かなくなってしまった。

「っふぁ…なるほ…どぉ…!」

返ってきた想像していなかった甘い声。
成歩堂は頭をガツンと殴られたような気がして目を見開く。

「み、御剣…?」

「成歩堂、っ…!」

そそり立ったそれから唇を離して成歩堂を見上げ、頬を赤く染め瞳を潤ませた御剣は、耐え切れなくなってついに叫んだ。

「私の中、に…キミが欲しい…欲しいのだ!」

「…!!?」

言葉にしてしまうと最早タガが外れたように、御剣は夢にまで見た快楽を追い求める為、自らベルトを外してスラックスを下ろし、後孔に指を這わせる。
事態を把握できない成歩堂が呆然としていてもお構いなしで指を差し込んだ。

「は、ぁん…!」

大きく育った赤黒いそれを口に含んだまま、御剣は自らの尻を割りピンク色のそこに飲み込まれた指を抜き差ししている。
前屈みの姿勢になっているため、成歩堂からもそれがしっかりと見えた。

(…なに、これ…)

御剣のいきなりの乱心に事態が飲み込めず、成歩堂はただただ目をしばたかせた。
そうしているうちにも、目の前の光景はどんどんと凄まじいものに変わっていく。
特に、見上げてくるその瞳は最早凶器。

(夢…なのかな。)

「んっ、あっ…成歩堂!」

(御剣がぼくの名前を呼んで、自慰して、喘いでるなんて。)

熱く潤んでいくアッシュグレーの瞳が、見つめる。

(私は、なにを、しているのだ…)

御剣の頭は思考を止めてはいなかったが、自分自身でも抑えられない衝動に逆らえず、愛しい彼の目の前で行為に耽った。

「御剣っ…」

(もう、夢でも良い!)

「お前を抱きたい!」

口を突いた言葉と共に、成歩堂自身にしゃぶりつく彼を引き剥がし腰を抱き寄せて唇を奪った。
驚きで硬直してしまっている彼の口内を貪り尽くす勢いのキスを続けると、御剣の体から力が抜けた。

(なるほど…う)

そこまで来て、思考は溶かされてしまった。
内部を弄る指先を腕を引っ張って引き抜かれ、代わりにあてがわれた物に御剣は身震いした。

「あ…」

法廷で突き付けられるのとは、まるで気色の違う、指先。
「良い…よな」切羽詰まった熱く掠れた声で言われ、頷く暇もなく押し入ってくるそれに、現実だと認識できないまま体を強ばらせる。
先程まで自分自身の指を受け入れていたにも関わらず、緊張からか圧迫感があった。

「力抜いてよ、御剣」

「…っ」

名前を呼ばれ、一瞬締め付けた後にとろけるように力が抜けた。そこを見計らって中指を根元まで突き入れる。

「あ…!」

自分で慣らしていたからか、痛みだけではない声を上げて御剣は背を反らした。

(成歩堂の…指)

それを自覚した途端、これは現実なのだと一気に理解する。焦がれて焦がれてしかたなかったそれに呼び起こされて、脳がというよりは脊髄で。

「っ…!」

内部で蠢き始める指に、嬉しさで涙が溢れそうになるのを必死で堪えた。
その表情があまりに可愛らしくて、成歩堂は抑制が効かなくなっていくのを感じる。

「可愛い、御剣、みつるぎ!」

「ひぁ!…っ」

「ここ?此処が良いんだね…」

声を聞きたい一心で、その場所ばかりをグリグリと刺激する。
体の芯を走り抜ける快感に下半身が麻酔が効いているかのように重く、しかし鋭敏になる。
成歩堂の節くれだった指の関節が入り口を擦り、指先は前立腺ばかりを押さえ続ける。

「あ、あ、ぁ…いやぁ…」

御剣は初めて感じる強すぎる快楽に、腰を浮かせている体勢をとっていられなくなり正座をするようにへたり込む。
その体を抱き寄せ脚を一度伸ばさせるとベッドに押し倒して見下ろす。
瞳と同じ重厚なアッシュグレーの髪が真っ白いシーツにばらけ、頬は綺麗な赤に染まっていた。

「ああ…、なるほどぅ…っ」

いつも不機嫌そうに寄せられている眉は下がってとろけた表情を作り、第1ボタンだけが外れた以外はきっちりとシャツとベストを着込んでいるのが逆に色香を放っている。
更にその半開きの唇が愛しげに名前を紡ぐものだから、成歩堂は最早欲望にその身を預ける他なかった。

(堪らないよ、御剣…!)

ベストのボタンを外してシャツをたくし上げ、胸を撫でると膨れた突起に触れる。

「ひっ…!」

大袈裟な程びくりと震える肩に、御剣はそこが弱いのだと解り成歩堂はニッと笑う。
前立腺と共に弄ぶと御剣は背を大きく反らせて瞳を見開いた。
「ぅあっ!嫌だ、離し…ぁ、あ、んんっ…んうぅ…!」

限界なのだろう、白い身体が跳ね上がる。
本来なら射精しているであろうそこはただビクビクと震えるばかりで、前立腺マッサージによってもたらされたドライオーガズムに御剣はあられもない声を上げて悶えた。

「ふあぁあ…ッ!なるっ、体が…ぁ、あ、あ!」

「すごい…!御剣!」

女性の感じる絶頂に匹敵すると言われる程の激しい快感が脳まで揺さぶり、御剣は意識を飛ばす寸前で持ちこたえている。
背中に強く爪を立てられ、それすらいとしくて成歩堂は口角を上げた。

「すごい、いやらしい御剣…」

ガクガクと痙攣する御剣の全身を強く抱き締め、指を引き抜くと成歩堂はそこに熱くたぎった物を押し付けた。

「挿れる、ね」

「あ、ァ、だめ…だめだ…」

朦朧とした意識の中、これ以上の快楽を与えられれば自分は狂ってしまうと必死に首を振る。
しかし腰を掴まれ力を込められて、ひくひくと収縮するその入り口を、熱く太いものが押し入っていく。

「うぁ…ぐぅっ…」

「御剣、力…抜いて」

耳元であやすように囁いて頭を撫でてやる。
優しい声色に溜め息を吐いた体は少し力が抜けて、出来るだけ傷付けないように雁の部分を押し込んだ。

「んん――…!」

「もう、楽になる、筈だから…」

初めて感じる愛してやまない彼の内部。
入り口のキツさに少し戸惑いながらも、心拍数は上がるばかりだった。
一気に押し入りたい欲望を、彼を大事にしたいという理性で耐えながら、残りをゆっくりと埋めていく。

「うあぁあ…大きい…っ」

やはり痛みは禁じ得ないが、それよりも大きな充足感が御剣を包んでいる。
根元まで押し込むと、ぎちぎちに開かれた入り口がヒクッと痙攣する。

「ああ…お前のなか、熱いよ」

意外と空洞感のある奥に迎えられ、けれど充分過ぎる熱を持った粘膜に体が震える。
直ぐにでもイってしまいそうだ。

「全部…入ったよ」

余裕のない熱っぽい声で笑いかけると、彼がビクッと震えたのが解った。
まだ余韻の抜けない体は酷く敏感で、成歩堂の声や仕草、表情にまで感じてしまう。
そんな姿を目の当たりにして余計内部で硬度を増すそれ。
肉付きの整った長い脚を抱え上げて膝を自らの肩にかけさせ、ゆっくりと律動を開始させた。

「は…ぁ」

いつもの攻撃性も近寄りがたい雰囲気も、全てを手放した彼が感じ入った声を上げる。
支配欲が満たされていくのを息苦しさで感じながら、口角を上げる。
だんだんと抜き差しの速度を上げていくと、御剣らしい高級で上品なベッドが流石にギシギシと音を立てる。
更にいやらしく掠れた喘ぎが部屋中に響きわたって。防音がきいてて良かった、なんて考える余裕はもう無かった。

「御剣、愛してる…!」

脚を抱えたまま腰を押さえつけ、固定させ激しく抜き差しをし、時折前立腺を刺激してガツンガツンと乱暴に突き上げる。

「ぃ、あぁ…あ!!ナル、ほどぅ…好きだ!」

まだ白濁を吐き出していない御剣自身が2人の腹の間で擦れ、ぐちゅぐちゅと水音を立てる。
無意識に成歩堂の腹筋に擦り付けるように腰を上げて揺らし、御剣の喘ぎは更に激しくなっていく。
突き上げる方も息が荒くなり、限界が近付いているのが解る。
もう他のことなど何一つ考えられずに互いを貪り合い、2人で絶頂を目指した。

「みつ、るぎ…御剣」

「あっ、なる、なるほどぉ…!ぁ、んんんッ!」

成歩堂の下で大きく背を反らし、背中に爪を立て熱い白濁を吐き出す。
上がった悲鳴のような声と泣きそうな表情、強く締め付ける内壁に、成歩堂も絞り出すような吐息を洩らして、彼の最奥に吐精した。




二人分の荒い吐息が部屋に響く。
御剣に覆い被さったままの成歩堂は、労るように愛しげにアッシュグレーの髪を撫でる。
猫っ毛が柔らかくて気持ちよかった。
心地良いのは彼も同じのようで、絶頂を迎えて閉じたままだった瞳を薄く開き、目の前の男を捉える。
そして見たことがないような柔らかな笑みを浮かべるものだから、成歩堂は心臓が高鳴るのを禁じ得なかった。

「好き…だよ」

「私も、キミが…」

「僕が…?」

「その…」

(素面では言えないのかな)

酔っ払って大声で叫んだ上、さっきまでは喘ぎながら繰り返してたのに、なんて伝えたら殴られそうだと思いつつ、彼はニッコリと笑った。「良いよ、言わなくても解る。そんな顔するの、ぼくにだけだろう?」

そう笑った男に、御剣は顔を朱に染めた。そして躊躇いがちに伸びた腕は、成歩堂の頬に添えられて…









「…はっ!!?」

成歩堂が目を覚ますと、見えたのは白い天井。
射し込む朝日が瞼を焼く感覚に思わず目を細める。

「あれ…?朝か…。何かすてきな夢を見てたような……………って夢ぇぇえ!!!?」

自分が眠っていたことに気付き、絶叫する。

「夢、まさかっ、うわぁぁぁあ」

頭を抱えて激しく苦悩する成歩堂。現実を否定するように瞼を臥せて首を左右に振った。
御剣と結ばれたのは夢だったのか…
今まで思いが通じた夢を見てしまい意気消沈することは度々あったが、今回の夢はリアル過ぎた。
それだけにショックが大きく、何か叫びながら左右に頭を振り、もはや彼のそれはヘッドバンキングである。
その最中だった。

「何事か!!!!!!」

成歩堂の叫び声に御剣がドアから飛び込んできたのだ。

「み、みっ…!」

成歩堂はそれに驚いて固まってしまった。
御剣も成歩堂を見て固まる。全裸でヘッドバンキングしている男を見ればそれはそうなるだろう。

「みつ、みつ、みつるぎ!」

「な、なんだ…」

激しくどもる成歩堂に御剣は少し引いている。これは夢の続きとは思えなかった。

「あの、御剣…、腰…大丈夫?」

まだ疑っている彼はそう尋ねてみた。恐る恐るといった雰囲気である。
途端に御剣の顔が真っ赤に染まった。それでやっと確信が持てた。そもそも落ち着いてみれば此処は自分の部屋ではないし。
全て現実。だとすると昨晩はこのベッドで彼と繋がったのだ。そう思うと口角がひたすら緩む。

「御剣ったら可愛かったよ、うふふふ」

そう言って満面の笑みを浮かべられ、御剣はたじろいだ。顔から火が出そうで、相手から顔を背ける。

「そんなことはどうだって良い…ッ何だか知らないが朝っぱらから叫び声を上げないでくれたまえ!全くはた迷惑なっ」

怒鳴りつけた御剣はそのまま入ってきたドアから出て行ってしまった。彼はエプロンを着けていた、ピンク色のひらひら。
昨日あわや抱かれそうになったことも忘れて成歩堂はただにやける。
台所に向かったんだろうな、なんて思いつつベッドから降りて昨晩脱ぎ散らかした服を纏う。全裸で行ったら彼は怒るだろうから。
シャツを羽織ると、焼けた卵の香りが鼻をくすぐる。
あいつは不器用だから、卵焼きじゃなくスクランブルエッグか目玉焼きだろう。なんだかとてつもなく幸せな気分になって、成歩堂はキッチンへ急いだ。



おわり







ミツナルのターン短いな…もっと長くても良かったかも。
文章の始まりと終わりを考えるのが苦手なのです。
だから終わりが唐突なのです。あぁぁ。