「…四月が来るな」
「ああ、来るね」
「…憂鬱だな」
「え、そう?」
「四月は自殺者数が最も多い月だ」
「……あー」
「四月になれば中央線のダイヤは乱れ、
クラシックのCDが飛ぶように売れ、
屋上には揃えられた靴、
温かくなったというのに何故か売り切れる練炭、
ナリを潜めていた痴漢は頻出するわ、
花粉は飛ぶわ、
酔っぱらいは五月蠅いわ、最悪だな。………統計によると。」
「…最後の方完全にお前の私情じゃないか」
「つまりな」
「ん?」
「一番憂鬱なのは三月末だということだ」
「なんでだよ?」
「四月一日にいきなり死にたくなるわけではあるまい。」
「…あー、三月に溜まって…?」
「うム。三月に緩やかに蓄積したストレスが四月に入り、新入社員やら部署異動やらなんやらで爆発する訳だよ」
「そう、なのかぁ…?」
「私独自の理論だが」
「えー」
「つまり三月は最も鬱だと言える。死ぬと決めたら気が楽になるものだからな」
「おいおい…」
「ああ…鬱だ死のう」
「なんで!?ちょっと!」
「私なんて死ねば良いのだよ」
「お前ね…」
「私の体など、卵子に二番目に辿り着いた精子にくれてやれば良かったのだ!」
「生まれてきた事を悔やむなよ!」
「ああ、しかし一度の射精に含まれる精子の数は1〜2億だ。その中から選ばれてしまうなど非常に不運ではないか」
「大当たりだと思うけど…?」
「更に、男が死ぬまでに作る精子の数は2兆と言われているのだぞ?何故2兆分の1で私は生まれてきてしまったのだ?」
「ぼくと出会うためじゃないの」
「…こんな不毛の地で百年過ごさねばならないなど何という拷問だろう。生まれた瞬間にコンドームの中で死んでしまいたかった」
「…シカトかよ」
「しかしキミも不運な男だな」
「なんで」
「世界人口70億の中から私などを選ぶとは」
「好きで選んだんだけど…」
「私達がそのようなアレな関係になる確率など天文学的な数字だぞ」
「どれくらい?」
「7000000000-2の階乗分の7000000000の階乗。それマイナス2の階乗。更にその1人ずつが2兆分の1だとして」
「…もう良いよ」
「…ム」
「でもさ」
「…ム?」
「確率なんて結局いつも1でしょう」
「何故だ?」
「運命だからだよ」
「運命?」
「そう。」
「馬鹿な」
「ぼくがきみを愛したのも運命だよ」
「…馬鹿な」
「御剣、顔赤いよ」
「五月蠅い!」
「御剣、愛してるよ」
「五月蠅いっ!あ、こらくっつくな!」
「くっつくよー。愛してるよ、愛してるよ御剣ぃー」
おわれ
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