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去年までは咲いていた桜の木が今年はもう、枯れていた。
他の場所の桜は満開だというのに、事務所の窓から見える桜は、死んでるんだ。
去年の春に見た時は景色としてしか捉えていなかったけれど、こうして枯れるともっとよく見ておけば良かったって思う。
もう二度と見られないなんて、その時点では知る由もなかった。
…まるであの時みたいだな、なんて思う。
小学四年生の時、ずっと一緒にいられると思っていた彼を失ったあの日を。
もっと一緒に遊べば良かった、もっと話せば良かった…って深く深く後悔した。
まぁ、桜に対して「どうして救ってやれなかったんだ」とは思わないけど。
そこに当たり前にあったものがなくなる、その喪失感は計り知れない。
…そして今も。
やっと手に入れたはずの彼はたった一通の書き置きを遺して…死んだ。
過去の悪夢から、師の呪縛から、彼の信じざるを得なかった正義から、救えたと思っていた。
そんなぼくの想いを受け入れて戸惑いながら手を握った彼は、何を想っていたのだろう。
彼はぼくの想いを知っていた、ならばこれを裏切りと呼ばず何と呼ぶのだろう。
彼は死んだ、もう、いない。
それを知ってからぼくは世界がやたら鮮やかな色彩に見える。
今までと同じ景色がけばけばしい原色のように見えて、頭痛と吐き気を催す。
いっそモノクロにでも見えたならどんなに幸せだろう。
こんなにも、世界は汚い。
たった一年前、綺麗だと思ったパステルカラー。
あの日の桜の色なんてもう、忘れてしまった。
あの日の君の顔なんてもう…忘れてしまいたいのに。
枯れ木が土に還るなら、ぼくの想いも朽ちて無に帰せばいい。
はやくその日が、来ますように。
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