「みつるぎーいい加減に出てきなよ」

「……」


扉の向こうから、返事は帰ってこない。


「一人でご飯食べちゃうぞ」

「……」

「今朝は御剣の好きなヤツだよ」

「……」


君がだんまりを決め込んでからもう、一時間はこうしている。

寝室の扉に向かって喋り続けるのは、なかなかに疲れる。独り言のようで精神的に。

まぁ、それは、僕が御剣を怒らせたからなんだけど。

何で怒ったんだっけ?そんな事も忘れかけているって知ったら、君は余計怒るだろうな。


「御剣」


せっかくの休日が潰れていくのが勿体無い。


「閉じ籠もってたって良いことなんか無いぞ」


そう言った時だった。


「……私は、」


一時間ぶりの声。少し、掠れてる。まさか、泣いてたのか?


「閉じこもってなど、いない」

「…居るじゃないか」

「違うのだ、私が…そう、私が君を閉じこめたのだよ」


…はい?
何を言い始めたんだこいつは。
声には出さずに、感情の読めない声に耳を傾ける。


「私が、此の鍵を掛けて、君を閉じ込めた。其れだけだ。
面積など重要ではない。君が此の部屋に来ることが出来ないのは、私が其方に行けないのと全く同じだ」


同じなもんか。そんなに拗ねて閉じこもってるのを認めたくないのか。


「地球をほぼ半々に一周するように壁を立てて、行き来出来ないようにしたならば、人々は閉じ込められたと思うだろうか?
思わないだろうな。生活には何の不自由もないのだから。私とてそうだ、全く、全く以て閉じこもったなどとは不愉快だ。」


何を言ってんだ。そんな涙声で。
壁なんかどうやって立てるんだ。
不自由がない?馬鹿言え。ご飯は?風呂は?それより何より。


「僕はどうすんだよ」


例え寝室以外に閉じ込められて(御剣の言い方に従ってみた)何の不自由がなくても、困る。
僕は、世界から8畳の寝室が消えただけでとても困る。
お前の顔が見たい。素直にそう思った。


「御剣」


だから、その鍵を開けて。


「御剣」


早く、僕を此処から出してくれ。


「愛してるよ」


ああ、僕はたった八畳の部屋を、それ以外の場所すべてより、求めてしまっていた。




初ナルミツ。
御剣の人格掴めず。