「ねぇ二人とも、良いこと思い付いた!」
成歩堂事務所のうららかな午後。
何故か御剣もしっかりいる。
にこにこ笑いながら真宵が二人を見る。
「何が、だろうか?」
「指輪買いに行く方法!」
前にそんな会話をしてから一週間、成歩堂と御剣がそれと疑われずペアリングを買う方法を思い付いたようだ。
「え、どんな?」
「あのね、バンドマンのフリ!」
「バンドマン…って何で…?」
「バンド組んでるメンバーで、お揃いのリングしてる事ってあるみたいなの」
「ああ…なるほど」
「呼んだ?」
「呼んでいない」
「それは良い案かもしれないね。じゃあぼくボーカル!」
「待て!何故キミがボーカルなのだ!」
「歌上手いんだよ?」
「ほう、ならば歌ってみたまえ」
別に、見た目だけで良いのに…と内心ツッコむ真宵。
だがとりあえず黙って見ている。
成歩堂がちょうど置いてあった携帯をマイクに見立てて握りしめる。
『出会ってから、どれだけ同じ傷を……♪』
「…意外と上手いっ!」
「…(美声にどきどき)」
二人は普通に聞きほれていたが、サビに入った途端に成歩堂の表情が変わる。
かと思うと…
『レイジっ!レイジっ!レイジっ!レイジっ!君の名を呼んでみてもっっ!♪』
…シャウト混じりに叫び始めた。
「…なるほどくん!そこは「レイジ」じゃなくて「レイラ」だよ!!」
『レイジ!レイジっ!レイジ!レイジィィイ!!!愛してる!!!愛してるぅぅうって痛ぇええ!!!!』
御剣に激しく頭をひっぱたかれてやっと止まった。
「何だ今の歌は!」
「御剣への愛を替え歌でっ…」
「それは良い、ただこの歌詞では私は死んでいるではないか!」
「死んでますね…ハイ…」
「あまりに酷いではないか…」
「ちょっ、ぼくが悪かったから泣かないで!」
「な、成歩堂…、だって…」
「ほら、愛してるよ、ちゃんと愛してるから…」
いちゃつくバカップルを見ながら、『このシリーズ御剣の人格がおかしすぎる』と思う真宵であった。
着替えを済ませ、事務所を出る二人。
仕事しろよというツッコミは完全にスルーである。お話にならない。
バンドマンがどんなもんかよく解らなかったので、とりあえず黒い皮ジャンを着込みサングラスをしてみた二人であった。
180cm近い男が二人並んでそんな状態なので完全に街の平穏が乱れているが、彼らは全く気にしていない。
御剣がギターケースを背負っているのは良いとして、成歩堂は何故かマイクスタンドとマイクを生で持っている。
ボーカルですよアピールのようだ。
二人はお洒落な雰囲気の、カップルで賑わう貴金属店に入った。
完全に路線を間違えている。
もう少しバンドマンが行きそうなシルバーショップとかあっただろお前ら。
店員も客も釘付けである。
「ぼく…いや、俺らのバンドの、リング作りたいんで…いや、作りたいんッスけどぉ」
空気に耐えられずもはや言い訳がましい。
しかも悪ぶろうとした口調が事態を深刻にしている。
「はい、どういったものをお探しで?」
店員さんは流石である。
暫くして二人で気に入ったものを選んだ。
店員さんのセールストークも絶好調だ。
「バンドなんてすごいですね!なんてバンドなんですか?」
「え…」
成歩堂は硬直する。考えていなかったらしい。
そしてとっさに出て来たのが…
「な、成…ナル…、ナルミツウェーブです!!!!」
意味不明。
「で、買えたの?二人とも」
「…いちおう…」
「一応って?」
「見てこれ…」
手渡された指輪の裏側には、しっかりと彫り込まれた「ナルミツウェーブ」の文字が…
「……何それ」
あまりの意味不明さに開いた口がふさがらない真宵であった。
おわれ
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