「御剣、ひとつお願いがあるんだ」
成歩堂が真剣な顔をして、私を見つめる。
ソファーに座って身を寄せ合っていた彼を見、首を傾げる。
すると彼は、どこからか畳まれたシャツを取り出した。
真っ白なカッターシャツは私のものではない。不思議に思いつつも受け取ると、彼の両手が私の肩を掴んだ。
「裸にシャツ一枚の御剣が見たいんだ」
「…は?」
ちょっと待て……裸にこれを着ろというのか?色々な場所がはみ出すが。
こいつは馬鹿ではないのか。
思いつつも口には出さないまま、とりあえずそれを突き返しソファーから立ち上がった。
無言のまま背を向けて自室の扉に向かうと、背後で彼が迷う気配が伝わる。
無視して自室に入り、鍵をかけた。
全く…キミは、全然分かってない…。
五分ほどして、鍵を開けて廊下に出る。
私を怒らせたと思ったらしく落ち込んだ様子の彼はソファーにうずくまっていたが、その音にびくりと肩を揺らして振り返った。
「あ、みつる……ぎっ!!?」
そして私を見るなり驚いた反応をくれる。
思わず喉を鳴らし、彼の側に寄ってソファーに片膝をついた。
「…どうかね?」
「えっ、え…っ?なんでカッターシャツ一枚…で?」
「見たいと言ったのはキミだろう」
「そう…だけど、だって嫌がって…」
そう、私は先ほど成歩堂に注文された服装をしていた。ただし彼のカッターシャツではない。私のでもない。
かなり大きい、股下がすっぽり隠れるくらいの大きさだ。
このようにダボついているシャツでやるから萌えるのではないか。
ぴったりな服でやったらただの下半身を露出した滑稽な図にしかならん。
「う、嬉しいけど…そのシャツ誰のだよ…!?」
「…このような要求もあろうかと思ってな。買っておいたのだよ。この程度の大きさなら日本でも手に入る」
「…はあ。じゃあ、それは?」
「これか?ニーハイソックスというらしいぞ」
彼が指さしたのは私の足元。膝上まである黒いソックスだ。
シャツとソックスの間で露出されている太ももの部分を絶対領域というらしい。意味は解らんが。
全裸に近い状態なのにソックスの締め付けだけがあるというのは、正直私もかなり興奮する。
非常に倒錯的で良い。
「なんでそんなの…」
「別になんでも良いだろう」
うっすらと頬を染める成歩堂。
彼から私の体が見えなくならない程度に緩やかに抱き付いて、耳元で囁いた。
「…欲情しないか?」
吐息を吹きかけてやると、彼は奥歯を噛み締めたようだ。耐えなくても構わないのだが。
「成歩堂…実はもうひとつ、装飾があるのだよ…?」
また身を離して、シャツの裾を片手で握る。成歩堂の視線は私の脚に釘付けだ。
緩やかに上に持ち上げていき、それが彼の目にさらされた。
「ううぅわぁぁぁ!」
成歩堂のマヌケな声が洩れた。もう少し色気のある反応をお願いしたいのだがまあ、それはいい。
私としては裸カッターシャツに最高のアクセサリーだと思っている。
内股にテーピングで貼り付けられたピンクローターのコードとリモコンは。
勿論入っている。奥まで入っている。大事なことなので二回言った。
流石に稼働してはいないがな。
やるならこのくらい周到にやらねばつまらん。
エロ可愛いなどもう時代遅れだ。これからはエロいやらしいの時代が来る。
どこまであざとくなれるかが勝負だ。
「み…御剣…エロいよーー!!」
「わっ」
困惑していた彼が突然私を床に押し倒してきた。
見上げるとその顔には「たまりません」と書いてある。どうやら大成功のようだ。
「御剣御剣御剣ぃー!」
「ん、成歩堂…っ」
完全に欲情した彼が私のシャツ一枚の胸に擦りよってくる。
そんな風にされると胸の先端が擦れてしまって、やたらと感じてしまう。
もう耐えられない。自慢ではないが、こういうことに関して堪え性はないのだ。
私は彼の上半身の衣服に手をかけ、手早く脱がせる。
脱げかけもそそるものがあるが、やはり裸がいい。
彼の意外と怒り気味な肩とか、噛みつきたくなる出っ張った鎖骨、程よい肉付きの胸とか、わき腹のライン。
あとまぁまぁの上腕二頭筋、そこから伸びる腕が長くて…そして何と言っても手首から先だ。
ゴツゴツした男らしい無骨な指は、やっぱり長い。かさついて少しささくれ立っているのも、それはそれで良い。
人差し指と中指だけ剥けが酷いのは………まぁ。なんというか。
兎に角成歩堂はいやらしい。ときめきすぎて呼吸がつらい。
「……ニヤニヤしすぎ…」
呆れたような表情の成歩堂に窘められた。そんなにニヤついていただろうか。
「早く下も脱げ」
先に言っておく。成歩堂の下半身を目の当たりにすると私は手が着けられなくなる。欲情する。堪らん。
「…脱げって言われると脱ぎたくなくなるなぁ」
「なっ…」
彼は笑みを浮かべて、私のシャツに手を入れてきた。
その指先はすぐに私自身を捕らえ、体がびくんと震える。
「御剣、勃っちゃってるよ?お前本当にぼくのカラダ好きなんだね」
「ム、ぅ…」
…全くもってその通りだ!とは思うが、わざわざ言われると恥ずかしい。
成歩堂は時々地味に言葉で私をつついてくるが、それもまた…いい。
「ん、ん…」
上下に擦られ、声が洩れてしまう。
シャツに隠されて見えないが、彼の太く長くていやらしい指が私のそのようなアレを…
……ああ、ダメだ。血圧が上がる。
「せっかく挿れてきたんだし、使おうか」
「え…ぁ…!」
カチカチとダイヤルを回す音がして…ピンクローターが震え始める。
前立腺あたりに入っていたそれが、私に刺激を与えて……というかいきなりMAXにするやつがあるか!
「んぁあああッ!」
叫び声に近い喘ぎが迸る。
私は物凄く感じやすいのだぞ、死んだらどうする!
「ああ、ああ…ッ!ダメ、止め…」
「止めらんないよ、もう。可愛いんだから」
耳元で囁かれると、理性が吹き飛びそうになる。(私にも理性くらいある)
その体格の男にしては高めの声が、抑えたように掠れて甘く神経を痺れさせる。
もう存在が媚薬だ。どうかしている。
しかし今はそれよりもローターだ。電池が切れそうなのか、時折ガツンガツンと跳ね上がりながら私を苛む。
床の上をのた打ち回り、ただただ喘ぐことしか出来ない。
もう、良すぎてワケが解らない…
「イくぅ、も、イっちゃうう!!」
「……ふぅん」
「…なーっ!」
ローターを抜かれた!信じられん!ふぅん、じゃないだろうが!早くイかせろ!
内心罵詈雑言をぶちまけていると、彼は自らのズボンに手をかけた。
「ぼくのでイこうね、御剣。お前の大好きなぼくので」
露出していく彼の下半身にそびえ立ったモノは赤黒く、血管を浮かせてビクビクと脈動していた。
グロテスクなその姿に、身体の奥から寒気にも思えるほどの熱が湧き上がる。
「そんな物欲しそうに見なくても、直ぐにあげるよ」
彼は床に横たわった私の脚を大きく曲げさせて左右に割り開く。
…この体位だと、自らの倒錯的な服装が嫌というほど視認出来て、流石に羞恥を感じる。
だからこの姿勢にしたのか?抜け目のない奴だ。
…そんなところが好きだぞ、成歩堂。
「……あっ」
彼のものを押し当てられ、身体が強張った。毒々しい見た目に反してつるんとした先端が、びくびく脈打つ私のそこにめり込む。
はぁ、と息を吐くと、一気に体内に押し入ってくるそれ。ああ、熱い上に大きすぎる!
「…ん、ぁぁあ…っ」
声を上げた私を見ながら笑い、彼は緩く腰を揺らす。
そしてその手に持っていた稼動したままのピンクローターを、私の胸の尖りにつきつけた。
「ひぃ…あ!」
変な声が洩れ、咄嗟に口を塞ぐ。
限界まで高ぶった身体には、キツ過ぎる。
内部を擦る動きは緩慢だというのに、シャツ越しの振動が私を狂わせていく。
そんな私を見つめる彼の瞳は妖しげな光りを湛えていて、胸を締め付けられる。
彼のそんな目が存外に好きだ。
もしかしたら見つめられるだけで極められるかもしれない、と馬鹿げたことを思う程度には。
「あッ、あ…もっと…」
もっと見て欲しい。もっと突いて欲しい。
キミの視線に侵されながら最奥を犯されるのは私にとってまたとない幸福なのだから。
「淫乱だよね、きみは」
成歩堂は厚めの唇で、私を辱める言葉を紡ぐ。
法廷で見せるような、しかしもっと性的なものを滲ませた笑みを浮かべて、私の内部を責め立て始めた。
勿論ローターは胸から外さないまま、イイ場所を突いてくる。
「あッ、あんっ、そこ…ぅう…!」
「ここが何?イイのか悪いのか、解らないよ」
「い…良い…からぁ!」
ここまで来ると最早、私に主導権は一瞬たりとも回ってこない。
だからこそ、する前にはせめて彼を翻弄してやろうと、私はあれこれ趣向をこらすわけだ。
別に、彼に虐められたくてやっている訳ではない。淫乱だとか言われたくてやっている訳では……ないのだぞ。
彼はS気があるようだから、セックスを盛り上げるために仕方なく…
「御剣、何考えてんの?ぼくに集中しろよ」
「え、ぁあ…ッ!すまな…っ!あ、あ、あぁんっ」
もう、そこから先は何も覚えていない。
床で何度果てたのかも、わからない。
とりあえず私に言えることはただひとつ。彼とのセックスは至上の快楽であるということだけだ。おそらく愛故に。
おわり
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