午前三時を回った頃。

帰宅した私は、スーツのジャケットだけを脱ぎ捨てて、直ぐにワインを煽った。

渇いた喉が焼け付くような、赤。

グラス一杯飲み干すと、そのままソファに倒れ込む。

暫く瞼を臥せていると心地良い感覚が体を支配するのが解った。

其れは痛み。

キリキリと締め付けられるような頭痛に、吐いた溜め息は色を含んでいた。

もともと痛んでいた頭は、アルコールで血行が良くなった為に徐々に響くような物に変わっていく。

この感覚が、堪らなく好きなのだ。

ドクドクと耳鳴りがして、キリキリと締め付けられる反面、フワフワと浮遊するような。

まるでそれは首を締められているよう。

開かれた唇が酸素を求めるが、其れが骨を軋ませ逆に呼吸を奪う。

頭が、もしかしたら脳自体がくらくらと揺れる。

私は、自らの衣服に手をかけた。

ベストのボタンを外し、スラックスから自らを取り出す。

生命の危機を感じているのか、快楽なのか、はたまたどちらもなのか。

そこは既に立ち上がって、熱く疼いていた。

それに指を這わせて握り込む。

性急に上下に擦り上げると、茫然とした頭が快楽を辿る。

自らの胸の突起も同時に指先で刺激し、唇から感じた声が洩れる。

指先で転がすように撫で、摘んで、爪を立てて。それに合わせて下肢はどんどんと熱を増す。

血液を奪われて、それでも目まぐるしく巡る熱に、頭痛は息が出来ないほどになっていた。

首を絞められながらのセックスは、酷く気持ちが良いらしい。

酸欠で何も考えられない頭と、どこまでも怠く重くなっていく身体。

それが忘れられず、私は自らの頭が痛むと決まってこういった行為に耽る。

限界を迎えそうなそこから敢えて手を離し自分で自分を追い込むと、切羽詰まった喘ぎが上がるのを抑えられない。

解放できない熱が逆流するように体内を巡る。気持ち良くて…苦しい。

けれど私は、どうしても後ろで絶頂に達したくて後孔に指を這わせる。

潤いの無い其処は、それでも誘うようにヒクついて私は身震いする。

欲しい、欲しくて堪らないのだ。

力を込めると、中指が内部に飲み込まれる。

痛みに息を詰めても、止める気には到底なれない。

根元まで無理矢理に埋め込み、内部を探る。

自分でも器用な方ではないと知ってはいたが、胸を弄る指は完全に止まってしまっていた。

感じる場所に指先が当たる。迷いなくそこに刺激を与えると、私の身体、同時に心音が跳ね上がるのを感じる。

ドクドク脈打つ心臓から送り出される血液が頭痛と快感を増幅させて、身悶えた。

痛い、痛い、痛い、けれど気持ち良い、どうしようもなく気持ち良い。

空中に放り出されたかのような浮遊感と、地に叩きつけられたかのような重力を同時に感じて訳が解らなくなる。

狂ったように指を動かして、重い体に走る電流に狂ったように喘ぎ続けた。

待ち望んだ射精感が雪崩のように押し寄せて、ただただ瞼を臥せて感じ入る。

意識までも真っ白に染め上げられて、激しい耳鳴りの中に、決して私を見ない男の声を聴いた気がして、絶叫と共に果てた。




「成、歩堂…」




頭が痛くて痛くて、ただ静かに泣いた。