ナルミツ以外の表現があります。ご注意下さい。






「おい」


仕事中ぼくは、街中で突然声をかけられた。

振り向いて確かめるまでもない、聞き慣れた恋人の声だった。

こんな所で珍しいな、なんて思っていると御剣はぼくの目の前まで来た。


「…貴様、何故ここにいるのだ?」

「え、仕事だけど…?」


当たり前過ぎる質問をしてきた彼に、少し首を傾げて答えると、何故かニヤリと笑われた。なんなんだ。


「…そうか、こんな所まで私の事を追い掛けて来たのか」

「…人の話聞いてる!?」


確かに15年間追い続けてきたけど、その発言はストーカー認定じゃないか?


「大体こんな所まで、って此処うちの近所だし」

「ム…?近くのホテルに滞在しているのか?」

「…?何言ってんだ、ぼくの事務所だよ。」


イマイチ噛み合わない事を不思議に思っていると、御剣も不思議そうにしている。

…消火器で殴られたりでもしたのか?

ほっといたら「事務所など持っていたのか」とか言い出しそうな気がしたので、ちょっと話題を変えてみた。


「…ぼくこれから帰るとこだけど、一緒に来る?」


そう尋ねると、御剣は少しだけ嬉しそうに表情を和らげて小さく頷いた。可愛い。

行こうか、って言ったら何故か君はぼくの手を迷わずに握って来た。

普段絶対に無いことに驚いて思わず離そうとしたけど、じっと見つめられるとそうもいかなくて。

事務所まで、手を繋いで帰った。照れた。










「お茶でも飲む?」


事務所に入るなりキョロキョロ辺りを見回している彼に声をかけると、少し訝しげな表情を浮かべられた。


「頂こう。…キミは私が日本に居る間、此処に居たのか…」

「…当たり前じゃないか」


…御剣は多分、記憶喪失だ。

病院へ行った方が良いんだろうけど、ぼくは自分がなんともなかった事があるから、楽観的なのかもしれなかった。


「キミには恐れ入るな…本当の意味で」


ソファに深く腰掛けながら、御剣はぼくを見た。

既に準備の整っていた、彼の好きな紅茶をいれながら少し目線をやった。

いつもは、直ぐに照れて反らすのに、ぼくを綺麗な瞳で見つめ続ける。

…紅茶が溢れそうになって、慌てて逸らした。


「はい、どうぞ」


かたん、と小さな音を立ててテーブルに差し出す。

御剣お薦めの茶葉を、御剣直伝の方法でいれた紅茶。


「うム…」


ぼくがきちんと覚えていたことに対してか、良い香りに対してかは解らないけど御剣は満足げに頷いた。

そして優雅な指先でカップを口へ運び、口に含み嚥下する。

一連の動作につい魅入っていたぼくに気付いたのか、彼はソーサにカップを戻す。


「ぅわ…っ!」


そして、いきなり手を引かれた。


「ちょ…っ!?」


彼はソファから体を起こしていて、ぼくは見事に押し倒されていた。

混乱するぼくを見て彼は口端を吊り上げて笑い、迷いもなくジャケットのボタンを外してくる。

呆然としたぼくは、ネクタイを解かれた所で漸く我に返った。

襲われている。


「ねぇ…、どうしたんだよ…?」


僕から仕掛けない限りストイックな彼は(火が付くと違うけど)、自分から誘ったり、まして襲うなんてことをしない。

それでもこれは現実。

返事の変わりに綺麗に笑った御剣が、ぼくの服に手を差し入れてくる。

くすぐったさを感じながら手を伸ばし、ヒラヒラを外してやる。

しゅる、と滑らかな生地が滑る音に興奮する。もう営業時間外で、鍵も閉めた。なんて思いながら、ベストのボタンを外していく。

その間にも、ぼくの体を這う指は下へ進んでいく。

膝に座った彼が反対の手でベルトに手をかけたのとほぼ同時に、ぼくは彼のYシャツを寛げ終えた。

白い胸板に指を這わせると、ぴくんと震える。

性感なのかくすぐったさなのか解らない程度の刺激。

対するその手から与えられる刺激は直接的な物だった。

ズボンのチャックと下着の前を開けて、外気に触れさせられたそこを握り込まれる。

考えられないくらい積極的な上に、…なんか、上手い。

悔しくて胸の突起をくりくり弄り回すと、余裕ぶっていた表情が歪む。


「んぁ…や…」

「乳首弱いよね…」


摘んで引っ掻いて押し潰して弾いて、片側ばかりを責め立てる。

御剣が甘く喘ぎながら、ぼくの膝に内股を擦り合わせているのが見える。


「ぁ、ん…反対も、して欲しい…」


強請る言葉を口にしながら自分でシャツを開いて見せる御剣に、軽く眩暈を覚えた。

ちらりと覗いた桃色の粒に、ぼくは無言で手を伸ばす。

両方の指を絶え間なく動かすとそこはぷっくりと膨れ、赤く色付いた。


「ぁあ、ん…」


ひっきりなしに甘い吐息を洩らしながらも、ぼくの物を弄る指先は的確だ。

先端を人差し指で撫でつけるように刺激されて、ぼくも息が上がる。


「本当に…今日はどう、したの…?」


そう聞くと、御剣は何故か少し泣きそうな顔をして、ぼくの方に手を伸ばして来た。

胸から手を離して握り返すと、いつも体温の低い指先までも温かくなっていることに気付いた。


「…キミに…会いたかった」


揺れるアッシュグレイの瞳に捉えられ、ぼくは胸が締め付けられるようだった。

確かに一週間会ってなかったけど、そんなにぼくを…

その可愛さに。理性を破壊された。


「…ねぇ、挿れたい…」


視線を合わせたまま熱っぽく囁いてやると、ぼくのから手を離す。

それでも此方を見つめたままだ。


「…自分で解せる…?」


いつもなら絶対に頷かないけど、今日ならしてくれそうな気がして聞いてみた。


「…ああ」


小さく短い返事だが、まさかのオーケーに少しだけ動揺した。

御剣が自らのスラックスに手をかけ、じらしているのかと思うくらいゆっくり脱いでいく。

全く日の当たることのない脚は真っ白く滑らかで、魅入ってしまう。

うっかり手を出しそうになるのを堪えてその様子を見つめていると、視線に気付いたのか御剣は挑発的に笑む。

法廷で見せるような表情だが、この局面では彼らしくない。

何故か、と考えている間にも衣服は取り去られその下肢を覆う物はなくなり、直接触れてはいないのに反応しているものが目に入る。

はだけてはいるが上はきっちり着込んでいるだけに、何とも卑猥な光景だった。


「…良い眺め…」


ぼくの言葉に御剣は少しだけ睫を揺らしたが特に反応はせず、ぼくの膝のあたりに座っていた体を少し前にずらし、ぼく自身と彼のそれが触れ合うくらいの場所まで上がってきた。

そして右腕を後ろから回し、ぼくからは見えないけど後孔に指先を這わせているらしかった。


「大丈夫?ローション使うか?」

「っ、いらない…」


首を左右に振る。

指を既に差し込み始めているのか、左腕もお尻に添えて広げているようだった。

潤いも何もないそこはキツいのだろう、眉間のシワが余計増える。

それすら色っぽく感じるのはぼくが変なんじゃなくて、時折上がるきみの甘い吐息のせいだと思う。


「いまどれくらい入ってるのかな…?」

「あ…ぅ、中指が…もう少しで…奥まで」


はぁ、と力を抜くために息を吐くきみの頭を撫でてやると、視線を合わせてきて。

ほんのわずかに微笑んだように見えた。


「…っ、あぁ…」


その直後に甘い声。ぼくにもゾクリとした快感が抜けた。

見るとぼくらの性器は触れ合い、御剣が腰を揺らす度に擦れて音を立てている。

快感でごまかしながら、内部の指を動かしはじめているらしい。


「はやくぼくのが欲しいの…?」


こくこくと間髪入れずに頷かれ、頬が熱くなるのを感じてしまった。

まだ痛みはあるみたいで時折呻くが大体は喘ぎ声に変わり、擦り付けられる場所が先走りを洩らしていることも解る。

もしかしたらぼくのものかも知れないけど。

くちくちとやらしい音が響いてぼくらの耳を侵す。


「あぅ…、人差し指、入った…っ」

「広がってきてるね…。そしたら、自分でいいとこ弄って見せて?」


そうお願いすると、素直にも感じる場所を刺激しはじめたようで、声が一層高くなった。


「ぁ、あ…やぁ…!」

「可愛い…」


尻に添えていた左手を、自分のものとぼくのものを一緒に握り込んで擦り上げはじめ、体がびくびくと震える。

自身を擦る動きはたまに止まってしまうが、そのぬるつきと熱さは補ってあまりあるものだった。

ふと手を伸ばして胸の突起に触れてみると、過剰なまでの反応が返ってくる。


「や、触…るな…」


首が左右に振られ、きれいな髪がぱさぱさ乱れる。扇情的な光景だ。

両手を伸ばし、再び両の胸を刺激してやると背筋を反らせ、甘い声を上げる。


「あぁ…いやぁぁ…、駄目、イってしまう…」

「イッちゃってよ…自分の指でさ」


ぼくの言葉に歪めた瞳にぼくを映して、ぐちゅっと卑猥な音を立てて、濡れきった声を上げて。

きみは自分の手の中に白濁を吐き出した。


「あ…ぁ……っ」


肩ではぁはぁと息をする御剣。

あまりに可愛くて、左手を掴んで引き寄せる。

付着した精液を残らず舐めとると、指先すら感じるのか気持ちよさげに吐息を洩らした。

…一緒に擦られて、ぼくのも限界だ。


「ねぇ…入りたい」


そう告げると、きみは内部から指を引き抜いて頷いた。身を乗り出してきたきみをきゅうっと抱き締めて、囁いた。


「愛してるよ…御剣」

「……!!?」


そう言った途端だった。君の纏う空気が変わる。
目に見えるほど、怒っている。


「な…、ななな…何、どうし」

「…帰る」

「えぇええ!!!?」


御剣は立ち上がって、ズボンを履き始めた。マジで帰るつもりらしい。

訳が分からないぼくは、腕を掴んでみたけど全力で振り払われた。

触れるなオーラを出してヒラヒラと鞄を掴み、シャツの前を留める時間も惜しいのかジャケットのボタンだけをかけて。


「死ね!」


酷い一言と扉を強く閉める音を残して、事務所から出て行ってしまった。


「……」


ぼくは、呆然としてしまっていたが、ハッとして彼を追いかける。

ズボンをちゃんと履く手間が惜しかった。

流石に捕まると困るのできっちり履き直して、ダッシュで後を追いかけた。

夕方で人通りが多く、既に見当たらなかったがぼくはとにかく走った。カンは働く方だ。

路地を一つ入った一本道の先に、赤色が少し見えた。

距離を詰めようとするけど、流石に向こうも本気らしく全然縮まらない。

あんまり体力のあるほうじゃないぼくは、体が限界を訴えている。

でも止まるわけにはいかなかった。


「御剣!」


叫んだら、ぴたりとその脚が止まった。

ぼくの声に立ち止まったのだと思ったが、それは違ったみたいだ。

一心不乱に走っていたぼくは足を止める。

目の前の光景が信じられなかった。

脇道から現れた男に、御剣は抱き締められていた。

その男は、ぼくだった。

…訳が解らず呆然とその光景を見ていると、ぼくじゃないぼくは御剣の手を引いて何処かへ行ってしまった。
















「…昨日、ドッペルゲンガーを見たよ…」


ぼくじゃないぼくがいるんだ、あれはきっと御剣じゃない御剣だったんだ。

そう思って彼にそう言ってみた。

あまりに非科学的ではあるが見てしまったんだ、仕方あるまい。


「……死期が近いのではないか」


当たり前だが信じていない様子の彼からは、辛辣な言葉が飛び出した。


「御剣もいたけど」

「…くだらん。わざわざ執務室に押し掛けて来てする類の話か?」

「本当なんだよ!ちょっと言動がおかしかったけど、確かにきみだったよ」

「ふム…成歩堂、知っているか?」


御剣は豪華な椅子に身を預け、顎に指を当てながらぼくを見る。


「…ドッペルゲンガーは言葉を発しないとされている」


…だってベラベラ喋ってたし。果ては喘いでたんだぞ。
…言えないけど。


「まぁ…それは冗談としても、きみが見たものに心当たりがある」


机から書類を持ち上げ目を通しながら言う御剣に、少し驚いた。
それは何なのか聞き返す前に、御剣は話し始めた。


「1ヶ月程前から、検事局に海外研修に来ている者がいるのだよ。名を、マイルズエッジワースというのだが。私に瓜二つなのだ」

「…なんだって…?」

「キミに似た者は知らないが、私の方は多分彼だろう」

「……ああぁ」


ぼくは御剣に聞こえない程度に呻いた。本当なら叫びだしたいところだ。

…人違いで…いや、間違われたんだけど、人違いで知らない人間を抱くところだった!!!!!

っていうか寸前までヤッてしまった…!

多分、ぼくの顔はいまビリジアンだ。


「何故か服装も声も同じなのだよ。不思議なこともあるものだ…」


性感帯も同じでした言えないけど!!!!!

愛する恋人の見分けが付かないなんて、間違えて浮気しそうになるなんて、なんかもう最悪すぎる…

御剣には何が何でも隠し通そう、バレたら見たこともない前代未聞な有り様にされそうだ。

ぼくが内心悶えていると、執務室のドアがノックされる音が響いた。

三度、コンコンコンと。日本ではノックは二度が多いけど本来は四回が正しい。

二回はトイレの時に使われ、三回は四回の省略。

…なんて現実逃避してみたけど。

ぼくの嫌な予感は当たる。


「怜侍、居るのか?」


扉の向こうからは御剣と同じ声、……ドッペルゲンガーさん…もといエッジワースさんとやらだった。

……生きて帰れる気が、しない…。





おわり










やっちゃいましたナルエジwww(?)

あと驚くべきは、本当にライトがストーカーしてきてた事ですね。日本まで…