夜十時頃、自宅でくつろいでいたジャージ姿の成歩堂。
そこへ突然チャイムが鳴り、不思議に思いながら扉へ駆け寄る。
押し売りかと音を立てないようにスコープを覗き込むと、見慣れたヒラヒラ。
安堵とも呆れともつかない溜め息を吐いて、チェーンを外し、ドアを開けた。
「いらっしゃい」
「…ム」
「…またかい?」
毎度のことなのか軽い調子で尋ねられると、
実は機械仕掛けなんじゃないか(しかもオイルが点されてない)と疑うくらいに軋むように頷いた。
苦虫を噛み締めた表情で一言。
「また破局した」
「今年三人目だね」
御剣が成歩堂のもとにやってくる理由はというと恋愛相談である。
しかしそれは「どうやったら好きになってもらえるか」ではない。
御剣はその容姿と才能故に、狙った獲物は100%落とす。
しかし問題はその後である。
「また一週間で破局なんてきみは…」
…すぐ振られる。
そして成歩堂に慰められに来るのであった。
「私の…私の何が…」
「良いから、とりあえず上がれよ」
悲観的にぼやきはじめる御剣を室内に通し、成歩堂は紅茶を入れてやる。
最初は安い紅茶だなと散々言われたが、毎回ちゃんと飲み干すのだから可愛いものである。
ひとつだけある二人掛けソファーの端に腰掛け、机に置かれたティーカップを持ち上げて成歩堂を見上げる。
今にも泣き出しそうだ。
傍に座り、会話を促すように見つめると、御剣は瞳をそらして眉根を寄せた。
「…私の何が、そんなにいけないのか…」
今年に入って、何度目のセリフだろうか。
「映画を見て、食事をして、贈り物をして完璧だった筈なのに…」
涙目になりながら肩を落とす御剣の話を黙って聞く成歩堂だったが、
実は御剣が振られる理由になんとなく見当はついていた。
ただ、言うのがはばかられるだけで…
毎回、ヤッた直後に振られるというのだから答えは簡単なのだ。
御剣は気付いていないらしいが…
幾ら何でも「ヘタくそなんじゃない?」とは言えずに、ただ頷きながら話を聞くだけだった。
しかし今日は少し違った。
「それで…彼女に言われたのだ…」
この先が問題である。
「…致している時の顔が気持ち悪いと…!」
「……え」
「あと、声もだと!なぁ、私は気持ち悪いのか!?」
「…ええええ??」
ヘタくそなのかもしれないけれど、御剣はイケメンの筈だ。
声だって低くて男でも聞き入ってしまうくらい透き通っている。
訳が解らず成歩堂は首を傾げた。
「気持ち悪いって…どういう風に?」
「解らない…」
しょぼんとしてしまった御剣は全く飲まないままカップを戻す。
気持ち悪いなんて言われたら、それはショックだろうなぁ、なんて思いながら見つめていると。
御剣は急に思いつめたような表情を浮かべて成歩堂を見た。
「…そこで、キミを親友と見込んで頼みがあるのだ。」
「うん…?」
「抱かせてくれ」
間。
「はぁあああああ!!!?」
「頼むッ」
「何、何言ってんのお前?大丈夫?頭大丈夫?って何でのし掛かって来てんのねぇー!!!!?」
「悪いようにはしない!」
「良いとか悪いとかじゃなく寧ろ良い方が悪いっていうか!!」
妙な気迫の御剣にソファーに押し倒された挙げ句、ジャージを捲り上げられている。
絶対絶命である。
「私の何が悪いのか、教えて欲しいのだよ…!」
「だからってこんなっ、んんー!?」
暴れる成歩堂だったが、完全に無視して唇を重ねる御剣。
歯列を割って、舌まで入れてくる。
肩を押し返しても離す気配はなく、口内を蹂躙される。
意外と上手い舌技に感心してる場合では、無い。
「っは!お前、こんなことしてるから振られるんだよっ」
「このような真似、女性にするか!強姦ではないか!」
「ぼくだって強姦だろ馬鹿!ってズボンを脱がすなコラ!!!!」
「強姦ではない、強制猥褻罪だ!」
解ってんのかよ!と突っ込む間もなく、成歩堂は全裸にされた。
御剣も服を脱いでいる。
こんな時だけ素早くて器用だ。
するりと肌を撫でられて、思考が停止した成歩堂。
そこでいきなりフラッシュバックしたのは真宵が事務所でみていたテレビ番組。
…暴漢に襲われそうになった場合の対処法…
1.肩などの関節を使っての反撃
2.大声
3.急所を攻撃する
「ごめんッ!」
成歩堂は謝りながら、3を選んだ。
確実な上に、なんたって全裸なのだから。
ガシッと掴んで、強く握ろうとした瞬間だった。
「あぁん…!!」
御剣の口から飛び出したのは甲高い悲鳴。
驚いてそのまま固まる成歩堂。
「…え…」
「ゃ…離、して…」
御剣の瞳が潤む。
成歩堂は今起きた事を確かめるために手を上下に動かしてみる。
「止め、や…だぁ」
「御剣、お前ってもしかして…」
「んん!やだ、弄らないで…!」
「滅茶苦茶感じやすい…?」
声と表情があまりにいやらしくて手を離す気が起きず、御剣自身を扱き続けていると彼の身体からは徐々に力が抜けていく。
「お前…、なんか…」
可愛い、と言おうとしてはたと口を止めた。
こいつは男で親友でしかも自分を犯そうとしてたんだぞ?
しかしそんな思いも、喘ぎ混じりに名前を呼ばれただけで粉々に砕け散った。
力の抜けた体を引いてソファーに沈ませ、押し倒す成歩堂。
「あ、成歩堂…」
見上げてくる潤んだ瞳、赤く染まった頬、熱い吐息、艶めく白い肌、甘く掠れた声。
成歩堂はゲイの気質はこれっぽっちもなかったが、御剣の全てが男の性を煽り立てる。
理性がぶち壊れる。
「御剣、全部お前が悪いんだよ…?」
言いながら胸の先端に唇を寄せた。
反対にも指を這わせ同時に刺激すると、ビクンと背筋をそらす御剣。
「っ…!?ふぁ…ん!」
可愛らしい反応に気を良くし、ピンと尖った乳首を苛める行為に没頭する。
肩を押し返そうとそえられた両手にも全く力は入らない。
それを良いことに空いている手を下肢に滑らせると、再び自身を握り込む。
男のものを弄るなんて考えた事も無かったが、成歩堂も男である。
男性器のどこが感じるかなんて解りきっていた。
擦り上げながら先端の窪みをぐりぐりと刺激すると、敏感な彼は面白いほど反応を返してくれた。
「ひゃ、あ、ぁぁあ…だめ、ぇ」
「んー、解った。お前ね…」
「ふ、ぅうっ!も、もう…!」
「……ヤられる側だわ。」
胸から唇を離して、耳元に息を吹きかけながら低く囁かれ。
「ん…っうぁぁあ!」
御剣は身を震わせながら白濁を撒き散らした。
「そんなの、女の子に聞かせる声じゃないでしょ…」」
「な…なるほど、う…?」
射精直後でとろりとしている御剣、成歩堂は当然のような流れでその長い脚を掴み割り開いた。
「な、嫌…!」
「うわ…」
眼前に露わになったピンク色の蕾に、思わず息を飲んだ。
…御剣だからなのだろうか?
男のこんな場所に興奮するなんて。
「御剣…」
濡れた指をそこに触れさせてみる。
途端に強張った身体。
もはや成歩堂に迷いは一点もない。
その蕾を丁寧にほぐすと、耐えるように震える。
御剣はもはや快感で意識が朦朧としていた。
慣らしながら少しずつ先端を埋めてくる指を感じて、成歩堂にきゅっとしがみついた。
性急に、それでも優しくされて痛みを感じないまま指が三本も飲み込まれる。
「そろそろ、良い?」
「ぁ…」
ずるりと指を引き抜かれ、内壁が収縮する。
すっかりとろけた銀の瞳が目の前の彼を映して揺れた。
…何故、嫌ではないのだろうか?
一瞬御剣の脳裏を掠めた思考だったが、彼の張り詰めたものをあてがわれてそんな余裕は雲散霧消した。
「力…抜いてるんだよ」
囁かれたと同時に。
「あぁああああ!」
侵入してきた肉の塊。
「痛…っ、い…」
「ごめんね、息吐いて…」
「あ…はっ…う…」
「そう…。良い子だね…」
優しく頭を撫でられ力が抜けた身体に、なんとか最後まで侵入する。
有り得ない場所を押し広げられる感覚は紛れもなく恐怖。
それでも同時に感じるのは、言いようのない快感。
触れられた事のない場所の皮膚が、生まれてはじめて感じた人肌の微弱な電流で痺れる。
「あ…な、成歩…、こんなの…変…」
「でも、気持ち良いんでしょう…?」
「ぅ…く…」
痛いはずなのに、動いてもいないのに、こうしているだけで腰の奥がずきずき痺れてくる。
成歩堂に抱き締められ、唇を重ねられ、頭を撫でられるのが気持ちいい。
おかしい、こんなのは…
「動くよ…」
耐えられなくなった成歩堂が腰を揺らしだす。
ソファーがぎしぎし鳴るのと、御剣の声が重なって甘く聴覚を犯していく。
それに煽られ、成歩堂は知識だけで知っていた『気持ち良くなれる場所』を探し始める。
奥まで押し込んだ性器を内壁を擦るように引き抜き、腰を回すようにそれを繰り返す。
「…ぁあ!?な、に…嫌ぁ!っ…!」
ある点に達した時、御剣は大きく身を跳ねさせて悶える。
同時にきゅっと締め付けてくる内部。
「へぇ…そんなに、イイんだ…?」
「…め、だめ!ゃ、止めて…ぇ! 」
「気持ち良いなら、止めない…よ」
何度も何度も、前立腺を狙って自身を押し付ける。
その度に白い肢体は反り返り、甘い声が上がる。
ぱさぱさと乱れる銀の髪が扇情的にソファーに広がり、赤く染まった頬と潤んだ瞳が見上げて。
その光景に息を飲み、成歩堂は腰の動きを早めた。
「ねぇ…、こういう風に…されたかったんだろ?」
自分も余裕は無いのにクスクスと笑いながら、耳元で囁く。
完全に意地悪で言った言葉だったが。
溶けた思考の御剣が、泣きながら返した言葉は意外なもの。
「…っ、あぁ…あ!…そう…かも、しれな…」
「え…?」
「ぁ、ンぅ!揺、らさな…っ…」
「何ソレ、どういう意味…」
「意味…?あ!ぁ、あ、だめ、も…」
…抱かれたかったのかもしれない…?
何で?
誰に?
僕に?
それとも、誰でも?
男なら誰でも?
そこまで考えて、成歩堂の思考はぷちりと切れた。
「あ、あぁ!イ…っ、なるほ、ぅあぁあ…!」
瞬間頭を支配した黒いノイズのまま獣のように突き上げ腰を振り、
…気が付いたら、中に出していた。
同時に高い声を上げて白濁を放った御剣が、はぁはぁと呼吸を乱れさせる。
成歩堂も息を切らしてはいたが、自分の下の彼を冷めた目で見下ろして、銀の髪を掴んだ。
「な…!?い、た…」
御剣の瞳が驚きに見開かれるのを目にして、口角がつり上がる。
「女の子抱きながらさ…そんなコト、思ってたんだ?」
「ち、が…」
「この、変態」
…成歩堂自身、何故自分がそこまで辛辣な言葉を吐くのか理解出来なかった。
ただ渦巻く黒い感情が、彼を動かす。
…誰でも良かった?
ぼくより先に迫られてたら、その人も受け入れてたの?
可愛らしく鳴きながら、
愛しげに名前を呼びながら、
…受け入れてたの?
「誰でも良いから、抱かれたかったんだろ?」
冷え切った声が、空間を凍らせる。
その空気を介した氷柱のような言葉は御剣に突き刺さって。
冷たさに溶け出すことすら出来ない銀の瞳が、揺れながら見上げる。
…そして、細めた瞳に成歩堂を映して小さく笑った。
「…え、」
「…成歩堂?」
「何だよ…」
「解ってしまった」
「…?」
「私はずっと…キミに、抱かれたかった、ようだ…」
笑った表情で、泣きそうに切ない声で。
その告白とも取れる言葉を聞いて、驚いたのは成歩堂だ。
御剣にそう告げられた瞬間。
黒く塗りつぶされていた思考が砕けて、
何故か、体温が急上昇して、
何故か、心臓が跳ね上がって、
何故か、自身が硬度を増して、
何故か、死ぬほど嬉しくなった。
「…あ」
その瞬間、彼は完全に自覚してしまった。
ぴたりと動きを止めた彼を御剣が訝しげに見上げると、瞳が合った瞬間に凄い勢いでそらされた。
「な、成歩堂…?」
少しだけ落ち着いた御剣は、自分が無意識に零した言葉が告白だとやっと気付いて、呆然とした。
御剣は、自分が女性にフラれる度に成歩堂のもとを訪れていた理由を自分自身やっと理解した。
今日だって、成歩堂を抱こうとまでしたのに。
不本意だが、本当に不本意だが…
彼がスキなのだ…
そこに成歩堂のこの態度だ、拒否されたと思い不安げに見つめていると。
御剣にのし掛かったままの彼は、みるみる顔が真っ赤に染まっていく。
それを見られないように御剣の肩口に顔を埋め、小刻みに震えている。
ない。
こんなのってない。
…恋だ。
…恋してる。
…御剣に恋してる!
一気に恥ずかしくなって、全く動けない成歩堂。
「あ…、成歩堂…?さっきのは別に、そのようなアレでは…」
「……御剣?」
「な、…何だ…」
成歩堂が緩やかに体を起こす。
「もう一回、シて良い?」
END
結局ラブラブエンドです!
まぁいつも通り。
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