「…――ぅう…ッ…」

静かな部屋に落ちる、私の呻き声。
爪先がギリギリ寝室の床に付くくらいに調整され、天井から吊られる全裸の身体。
その縄は手首を頭上で拘束してから天井へと伸び、しっかりとした金具に通されてまた下へ降りて来ている。
その縄の先が何処へ固定されているかといえば、私の身に絡みついていた。
後ろから前へと脚の間に食い込み、亀甲縛りでこの身を固定する麻縄。
爪先立ちが辛くて僅かでも足を床に付けようとすれば、反対に持ち上がる下半身。
丁度アナルに当たるよう作られた縄の瘤が強く食い込み、更には自身を締め付ける痛みが走る。

「ぅあ…ッ…」

思わず上擦った声が洩れる。
身動きさえ取れない。
そして、私をこんな状態にした男はといえば、
私のベッドの上でニヤニヤといやらしい表情を浮かべながらこちらを見ている。

「なるほ…どぉ…」

まだ自由の利く視線を彼に向け、掠れた声を洩らす。
もう暫くの間こうしている。
いい加減に脚が痺れて、崩れ落ちそうにすらなる身体だが、拘束に阻まれて叶わない。
それどころか、自重でぎりぎり締め上げられて余計に息が上がる。
背筋が反って更に床との接地が狭くなり、腕は千切れそうなほど上に引かれ、
身は亀甲に戒められ、股は裂けそうなほどになる。

「あぁ…ぁぁぁ…」

勝手に溢れた涙が頬を伝い、情けなくか細い悲鳴を上げながら懇願する視線を送り続けた。
それすら楽しそうに笑っている彼の視線に身悶えしてしまう。
あまりに底冷えする黒い瞳。

「も…痛ぃ…我慢、出来な…っ」

そう絞り出した私に、彼は漸く言葉を発した。
楽しそうに、しかし低く色を含んだ声色。

「…馬鹿言うなよ。そんなにしてるくせに」

その蔑むような視線は、私の脚の間に向けられている。
そこには、限界まで張り詰めて蜜を垂れ流す私のモノがあった。
痛々しくも食い込んだ縄に逆らうかのように膨張し主張するソレを、彼は見つめる。
蔑むような視線は、恐らく私を辱める為に彼がわざと作っているのだと、
そう解っているのにゾクリと背中に何かが走る。
更に大きくなろうとする自身に戒めが食い込み、余計に私を追い詰めた。
吐息が甘くなっていくのは、気のせいだろうか。

「ねぇ、御剣…ビクビクしてる…。縛られて痛いのに感じてるの?」

成歩堂の口調はいつも通り。
作られたいつも通りだ。
いつも通りではない私を辱める為の…

「それともぼくに見られるだけでこんなに濡らしちゃうくらい感じてるの?」

成歩堂が、ベッドから立ち上がる。
傍に歩み寄ってきた彼はクスクス喉で笑いながら、吊られて少し高い位置にある私の顔を覗き込んできた。
それだけで、その距離に、胸が高鳴る。

「ああ…そうか。両方だよね」

彼の表情に気を取られていた私が気付かないうちに、その手が身体の間に滑っていた。
言葉が終わると同時に、激しい痛みが走った。

「ぅぁぁあ…ッ!!?」

思わず大きく身を反らす。
海老の如くしなった身体に追い討ちのように、締め上げる縄。
その痛みの正体は、青色の洗濯ばさみ。
身が反り無作為にも突き出す形になった胸の突起を、挟み込んでいる。
まるで本気で噛み付かれているような痛みだ。

「ぃ、痛、痛い、…ッ」
「そうか?でもイイだろ?」
「止め、ひっ…あぁん!」

片胸に付いた洗濯ばさみから伸びた紐に繋がれた、
もう一つの同じモノを反対の乳首に取り付けられて、声を上げてしまう。
脳天まで突き抜け、飛んでいってしまいそうな強烈な痺れが身を裂く。
ぷっつりと膨れ上がった粒を潰そうとする青色のものが、平らな胸の上で揺れる。
ぐりぐりと洗濯ばさみを左右に動かされ、断続的にほとばしる声。
細かく痙攣し続ける全身、脚はつりそうになり、自身はドクドクと脈打っている。
縄に作られた大きな瘤が食い込んだ私の肛門は、いっそソレを内部に引き込みたいかのようにヒクついてしまう。
こんな痛みを享受しているというのに私自身は全く萎える様子もなく、先走りをだらだらと零して。
おかしい、こんなのは…

「ああ、ぁあぅ…ア…成歩堂ぉぉ…」

動けばその戒めはキツくなると、解っているのに…
何故、私は腰を揺らしているのだろう…?

「あぁっ…あぁ…、縄が…縄がぁぁ…」

そんな、だんだん狂い始めた私の、恥辱に濡れた姿を彼が見ている。

「ああ…、綺麗だよ。」

反った体にくっきり浮かび上がる六角形、両の乳首を飾る青色の洗濯ばさみ。
そんな異様な姿すら倒錯的に感じるのだろうか、成歩堂はうっとりした表情を浮かべている。
その瞳の中に燃える、欲望の炎が私に火を灯して。

「御剣、綺麗…だよ…」

焦点があっていないような深い黒色の瞳に捉えられ、息が詰まりそうだ。
彼の男らしい指が、挟み込まれた乳首を緩やかに撫でる。
引きつれた皮膚は驚くほどに感度が高く、確実に色の鮮やかな快感を得てしまう。

「気持ちイイよね…?」

笑いながら、その指先は洗濯ばさみを繋ぐ紐にかかる。
あ、と思う間もなく、勢い良く紐を引かれた。

「ぁひぃぃい!!」

バチンと響く洗濯ばさみの音、擦り潰されるかのような強烈な痛み。
私の唇から潰れた無様な声が上がって、その強烈な痛みに、私は…吐精した。

「あ…ひぃ…は、はぁあ…」

頬にまで届いた精液が伝い落ちていく。
ガクガク震える膝は崩れ落ちそうになるが、それも叶わない。
荒い呼吸を繰り返しながら全て吐き出し、涙に霞む視界で彼を捉えた。
先ほどまでいやらしい笑みを浮かべていた唇は表情を無くし、冷たい刺さるような視線で私を見ている。
意図してのことなのかは解らないが、恐ろしくて目をそらせない。

「何で勝手にイッちゃってるんだい?」

彼が青いスーツの後ろから何かを取り出す。
50cmくらいの革製の棒…それは馬鞭だった。
達してなお解かれない戒めに苛まれる私の背後に回り込み、成歩堂は吐き捨てるように言う。

「あんなのでイけるなんて、どれだけ変態なの?」

先ほどまでの含み笑いを感じさせない、絶対零度とでも形容すべき声色。
その声にも、彼の行動にも…否が応でも、胸が高鳴る。
ヒュ、と空を切る音の後に、肉を叩く音が響いた。

「はぁ…っ!」

場違いな程に甲高い喘ぎが口をついて、抑えようとした瞬間に次の痛みが走る。
小気味良い音が数度連続して聞こえ、私は断続的な快感に身を震わせた。

…そう、他でもない快感…だ。

燃えるような、痒くなるほどの痛みが背中を覆う。
おそらく筋状にくっきりと赤い痕が残っているだろう。


「あっあっあっ…、あ、あ゛ぁあ…ッッ」

「あははは!またチンコ勃たせてさ!この変態!」

「んはぁぁあ!うぁ、ぃ…いぁあああ」


叩かれ、逃れようと走る馬のように。
いや、自ら求めているのか。
これはもはや、完全なるエクスタシー。
打たれる度に、薄められる前の快感の源泉が、脊髄を、脳天を、揺るがせて、痺れさせて。

「いやぁ、縄、っ、いぁああ゛あっ」
「嫌…?ふざけるなよ御剣。縛られてないと、立ってもいられない癖に!」

笑っているのかそうでないのかさえ判別出来ない荒ぶったキミの罵声。
もう、私の瞳は焦点を合わせていないのだろう。
眼前の、何事もない自分の寝室が蜃気楼のように揺れる。
唇の端からは唾液までが流れ、ペニスからは精液なのか先走りなのか解らない液体が垂れ流し状態。
それでもひっきりなしに上がる矯声は、狂気の沙汰としか思えない。
そう、もう、わたしは頭がおかしい。
立っていられないのだ。
この縄が、戒めが、…いや、キミが。
私を繋ぎ留める唯一のモノ。
その鎖に縛られていないと…わたしは…

「こうやって、完璧な支配を求めないとお前は立ってすらいられないんだよ」

…完璧。
その一言に私が体を強ばらせるのを知っていて、彼は鞭を叩きつけた。
ぴしゃんと高く響く音と、私の切羽詰まった喘ぎ。
支配されていないと、わたしは、一人で立つことも、できない。
だから縋っていたのだ、この心を雁字搦めにしてくれるひとに。
それは心地良い支配だった。
何も考えなくて良い世界だった。
すがるものをさがす、あわれなマリオネットのてを取ったのは。


「あ…っ!?」

不意に、体が宙に浮いた。
ガクンと膝が折れ、床に倒れ込む。
縄を切ったらしい工具を放り出し、彼はうつ伏せのようになった私の体を反転させる。
先ほどまで吊られていた身体が悲鳴を上げるが、お構いなしに脚を持ち上げられた。

「ねぇ」

見る人が見れば可愛らしいとさえ形容される瞳が、歪められる。
感じるのは恐怖では、ない。

「ぼくが、ちゃんと縛っててあげるから」

慣らされてもいない場所に、彼の肉棒をあてがわれる。
入り口だけは嫌というほど捲れているだろう箇所が、それを求めて痙攣した。
身体中が疼く。熱い。熱い。熱い。


「あぁ…成歩堂、なるほろぉお…」

「欲しいの?」

「欲しい、ちょうだい…」

「何が欲しいの?」


見下ろしてくる、支配者の瞳。
キミが悦ぶ言葉なんて、もう解っている。
この唇が勝手に紡ぐ甘い吐息と、卑猥な言葉。

「…キミの、きみの…あつくて、おおきい…ペニスを入れて…。ぐちゃぐちゃに…して…」

まるで砂糖の海に溺れたような、怖ろしく甘い声で、懇願する。
身体中が傷だらけだというのに。
狂っている…

「ん…。あげるよ」

ぐ、と私を押し開いた質量に目眩がする。
縄のせいで擦り傷だらけの入り口からビリリと走るのは快感。
それを純然たる痛みと形容することは、もはや私には不可能だ。
キミに繋がれて、いる、証拠。
吊り上げていた部分を切っても、まだ体に残ったままの亀甲を彼が撫でた。
そして、緩やかに、唇の端を上げた、支配者。


「…ココロもカラダも、繋いでてアゲルからね」


…ああ、もう、とうに私は、キミだけのモノなのに…。
そう伝えようとした唇は、彼に塞がれた。
私の声も吐息までも全て自分のモノに、するかのように。



END


魚眼レンズ様、20000hitリクエストありがとうございました!
リクエストは「フェニエジで濃いSM」でした…
ナルミツでも可、とのことなのでついナルミツにしてしまいました…すみません;
普段あまり書かないテイストだったので、濃くなったのかどうかすら謎ですが、貰ってやって下さいませm(_ _)m