「ひ…ッ、ああああ…!」


ぼくは、彼を酷く抱く。

首輪を付けて、
後ろ手に縛って、
ベッドに繋いで、
長い脚を掴んで、
左右に割り開いて、
髪を掴んで、
押し込んで、
引きずり出して、
突き上げて、
泣き叫ばせて。


「いやあああ…!止め…なる、ほ…」


止めて、なんて。
まるでぼくが無理矢理してるみたいに。
まるで犯されてるみたいに。
涙を流しながら、淫らに背を反らす。
きみが感じる場所なんて無視で、ぼくが快感を得るためだけに、突き上げ続け。
まるでlove dollみたいな扱い。

血液が流れ出して痛みと異物感に引き吊れた声を上げても。

…きみが望んだことだろう?

その被害者面も…嫌いじゃ、ないけど。
気に食わない。

もっと、とか。
イイ、とか。

…言ってくれても良いんじゃない?

どんなにきみが喜ぶ事をしてあげても、まるで犯されてるみたいに、首を振るだけ。

苛だって、勝手に高ぶった身体はゴムもなしのまま弾ける。

そしてどうしようもなく悲しそうに、どうしようもなく官能的に眉を潜めたお前が達するのを、呆然と見ている。

…そんな毎日。










ぼくが御剣に告白したのが、何ヶ月か前のこと。
ずっと胸に秘めていた思いを、ぶつけた。
そして返ってきた言葉は思いもよらないものだったんだ。


『…私を抱きたいのか?』


ぼくが唖然としてしまって何も言えずにいると、御剣はぼくにそっと身を寄せてきて。
肉欲なんかじゃないって、あの時にはっきり言えれば良かったんだ。
でも、ぼくは…赤い唇の誘惑に負けてきみを抱いた。
きみが言う通りに、ぼくが望んだこともないくらいに、手酷く。
御剣が何を考えているのかなんて解らなかったし、今も解らない。
優しく優しく包みたいと、そんな思いを持ったままで…
何故か逆らえない思考を歪ませる行為に没頭するぼくを、
きみは愚かだと思っているのだろうか?







今日も、最初の日に約束したから、手首を縛る。
白い手首はもう、度重なる行為で赤黒く痣になっている。
こんなことを続けたくなんてないけど、従わないと傍に居てくれない。
この関係を止めたならば、もう一緒にいることも許されないのだろう。
御剣はぼくが、彼に向ける感情を許してくれない。
まるで憎んでいるかのような、傷付けるだけの性行。
彼がそうしてくれと言った。

大好き、
優しくしたい、
キスしたい、
癒やしたい、
撫でたい、
愛してる。

そんな気持ちを全部裏返して、体だけで繋がる。
きみは、嫌がる仕草を見せて、ぼくを否定する。
どういうつもりなんだろう?
この思いが届くことなんか無いって、言いたいのか?
体が手に入れば良いんだろう、と、愚かなぼくに突きつけているのか?

ぎし、とベッドが軋んで、御剣が喘ぐ。

「あ、あ、ああ…痛…ッ」

無理矢理指を突っ込まれて、痛みとそれだけじゃない悲鳴を上げるきみ。
不本意だと言っても、煽られることは煽られる。
なんて浅ましい。

「ひ…んっ!や、なる…ほ、どぉ…」

もっと可愛い声が聞きたくて、前立腺を刺激しはじめる。
途端に彼の体が反り返った。

「ぁ、は…あ、あ、…め、だめぇ…!」

綺麗に切りそろえられた爪が手のひらに食い込んで、身は激しく跳ねる。
上がる声は切羽詰まり、瞳は潤みながらぼくを睨む。

「ぁん、んんんっ…、…」

約束。
それはとても簡単。
きみの手首を拘束する。
乱暴に痛くする。
余計な事を話さない、しない。
この3つ。


「ごめん、ね」


二つ目を破った事に対する謝罪じゃない。
愛してるきみを酷く抱くことに対して。
…きみがどう受け取るのか、解らないけど。

「早く、挿れたらどうだ…」

まだ指は二本しか入ってないのに、急かす御剣。
ホントにお前は、どうなりたいの…?


「痛く、シて」


犯されてるみたいな顔するくせに。
おねだりだけは上手だね、困った子。
ホントに痛くなんか、したくないのに、脚を掴んでソコに宛てがってるぼくは…

…なんなんだろう。


「…いくよ、御剣」

「…う……、ぐぅ…っい!痛…ぁ!」


狭い入り口にめりめりと飲み込まれる肉棒。
逃げるように体を捩っても、拘束された身では意味をなさない。

「ん、痛…止め…止めて…ッ!」

「お前が、やれって言ったんだろ…?」

さっそく泣いちゃってるし…
ワケ、解んないよ。

「ん、ぁ!あっぅ…」

腰を掴んで、ぐちゃぐちゃな気持ちをぶつけるように突き上げる。
大切にしたいなんて言いながら、泣き顔に煽られてる。
可愛いな、もう。


「ね、御剣…っ」

「く、ぁ…何…」


ああもう、大好き、大好き、大好き、
約束破って良い?
もう我慢出来ないんだ。
無駄話、今日くらいは許されるだろ?


「今日何の日か、知ってる?」


揺さぶられ、苦しそうな声を上げながらこっちを睨む瞳。
咎める言葉が出て来る前に、無理矢理言葉を続ける。


「エイプリルフール。何言ったって、全部嘘だと思って良い日」

「何…っ、ぁぁあ!」


一瞬訝しげな表情を浮かべたきみ。
びくびく痙攣する内壁を擦り上げて、体を強く抱き寄せる。
今日くらいは、許してよ、ね?


「大好き」


約束を破ったぼくに、目を見開いたきみ。
そして最大の禁じ手。
愛しいきみに優しいキスを。


「優しくしたいんだ」


何か言おうとする度に唇を封じて。


「愛してるよ」


嘘なんかじゃない言葉を。
嘘だと思いたいなら思って良いよ。


「大好き、大好き、大好き、好き、好き、愛してる…」

「ゃ、も…言わな…ッ」

「嘘だよ、嘘だから…」


嘘なら、良かったのにね。
本当を嘘と言う嘘を吐いている嘘つきなぼく。
ならきみは?


「ぼくのこと、嫌い?」


銀の瞳が揺れた。
嫌い、でも良い。


「言ってよ、嫌いだって」

「な…んで…」

「だってさ、それが嘘になるんだから。」

「なら…」

「好き、はそのまま受け取るよ」

「…馬鹿な事を、」


嘘つきなきみが告げれば、真実も嘘になる。
嘘つきなきみが告げれば、嘘も真実になる。

本当は、
抱きしめて、
優しくして、
頭を撫でて、
キスをして、

…愛して欲しいんでしょ?


ああ、



「…すきだ」



…なんで泣いちゃうの、お前は。




end